タイトル トップページ 自己紹介 小説・童話 雑感

タイトル ・ (原稿用紙換算枚数) ・ 書き始めた日 ・ メモ ・ 本文冒頭
詩人にはなれない、もしくは何にもなりたくない
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(503)22/3/24ある高校文芸部の話
>  ――例えばそれは、降ってきた桜の花びらが指先にのるようなことだったのかもしれない。/ 高校に入学してまもなくの頃、あたしは北棟にある文化部の部室前まで来ていた。/ 別に……
ここは、小さな神様がいるところ(97)21/5/6傷ついた少女たちの話
> ――時々、小さな箱の中に入りたいと思うことがある。/ 膝を丸めて横になったとき、ちょうど体がぴったり収まるくらいの、小さな箱。自分だけがそこに入れて、それ以外のものは……
誰がアガメムノンを殺したの?(130)18/9/21高校演劇部の話
> 舞台上には、セーラー服姿に仮面をかぶった奇妙ないでたちの人物が立っている。仮面は赤い血に塗(まみ)れて、その姿は禍々しさと神々しさにあふれていた。/――このたびの勝負は……
ハード・ガール(137)18/3/27ある美少女の話
> ――吉野ゆきなのことを、今でも時々思い出す。/ 彼女のことは忘れようとしたって、なかなか忘れられるものじゃないからだ。いっしょにいた時間はそう長くはなかったけれど、それは……
雪が降る頃には、あの子は(75)17/8/23世界が好きになれない女の子の話
> 見上げると、冬の青空が広がっている。それは濃い群青の、どこまでも続く色のついた世界だった。/「きれいな空だね――」/ と、わたしは自分でも知らないうちにつぶやいていた。まるで……
ぼくが世界と一番仲がよかった頃(30)17/8/5ある冬の日の話
> ――ぼくが世界と一番仲がよかったのは、いつのことだったろう?/ それは、両親に連れられて、初めて海を見にいったときだろうか。/ 空も海も、同じくらいの青さで輝いて、それが世界の果てまで……
最後の図書館司書(75)17/6/14未来の司書の話
> 気がつくと、わたしは手術台みたいな場所の上に裸で座っていた。/ まわりには何かの機械やモニターが、引っ越したばかりみたいな乱雑さで置かれている。それらはいかにも不満そうで……
ぼくのお父さんは人殺しだ(60)16/6/30サイコサスペンスの話
> 時々、ぼくは夢を見る――/ 夢の中でぼくは、どこかの藪みたいなところにいる。でも、その光景は薄ぼんやりした霧みたいなもので、具体的な場所としてははっきりしない。たぶん、どこか……
天国まで持っていけるもの(148)15/10/25彼女が流した涙の話
> ――その絵の中では、雨が降っていた。けっこう、本格的な降りかただった。誰かに決められた時間を守るみたいに、長い時間をかけて降る種類の雨だ。情景全体が雨に煙っていて……
不完全世界と魔法使いたちE
〜物語と終焉の魔法使い〜(下)
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(418)15/2/14不完全世界を巡る終わりの話(最終話)
> ――彼は暗い夜の書斎で本を読んでいた。/ 書斎といっても、厳密には彼のものではない。それはここに二人が来てから一年ほどで亡くなってしまった、ある老人の使っていたものだった。……
不完全世界と魔法使いたちD
〜物語と終焉の魔法使い〜(上)
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(396)14/12/15不完全世界を巡る始まりの話
> ――彼女は暗い夜の森を走っていた。/ 目の前を、一人の男の子が同じように走っている。彼女と彼は、その小さな手をつないでいた。二人はまるで、何かから逃げるように足を動かしてい……
男はいかにして神≠ニなったか(8)14/4/21不遇な小説家の話
> その男は小説家だった。さらにいうと、売れない小説家だった。もっというと、あまり面白くない売れない小説家だった――いや、はっきり言おう、彼の小説はまったくのところ、全然面白くなかった……
終わる世界、と終わらない冬(48)14/3/29子供しかいない村の話
> 雪が降っていた。特別な白さをもった雪だった。長い時間の末に、すっかり色が抜け切ってしまった、というような。その小さな白い切片は、音もなく空から落ちてきた。大地は一面が……
悲劇の多くは日常に含まれる、と彼女は言うけれど(64)14/2/9世界になじめない女の子の話
> 何だか幸せな夢を見たので、今日はとてもいいことがあるような気がした。/ カーテンを引いて窓を開けてみると、六月には珍しいくらいの青空が広がってる。気持ちのいい青さが目に染みこんで……
星を探して(83)13/11/18星を探す若いグルガ僧の話
> その夜、東の地へと星が流れた。金色の光跡は空の闇を切り裂き、世界の半面を治める巨大な王は一時目を覚まし、そして何事もなかったようにまた眠りについた。/ 若きグルガであるエントは……
S君の恋(18)13/3/18不遇な恋の話
> S君は悪魔である。いや、正確に言うなら、悪魔の生まれ変わりである。といって、S君の尾てい骨から豚のようにくるくる巻いたしっぽが生えているわけでも、頭頂部にねじくれた山羊のような角が……
屋上から見える首を吊った死体(10)13/1/26一応、推理ものの話
>「あれって、やっぱり死体だよね?」/ 高校の屋上、空はよく晴れている。/ 秋晴れってやつ。手をのばすと、指先がちょっと透明になりそうな感じ。でも来るべき冬の予行演習か、今日は……
剣師と悪魔
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(408)12/9/29悪魔と戦う剣師の話
> 薄暗い雨の日には、いつも決まってその夢を見た。もう何年も使い古されているような灰色の雲が空に浮かぶ日には、必ずその夢を。一度の例外もなく。/ 夢の中身はいつも……
血の夕陽、骨の鳴る音(45)12/3/5怖い話をする少女の話
> 子供の頃、ぼくはとても怖がりで、ちょっとした物音だとか、大きな黒い影だとかにいつも怯えていた。そういうものが今にも自分に襲いかかってきそうで、どうしても反応して……
不完全世界と魔法使いたちC
〜フユと孤独の魔法使い〜
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(407)11/11/22一人でしかいられなかった少女の話
> 灰色の空から、音もなく白く冷たいものが降っていた。/ 十二月もはじめで、まだ本格的に雪の積もる季節とはいえない。凍えるような風が吹いても、吐く息の白さに驚いても、街はどこか明……
ぼくは魔法が使える(54)11/9/28魔法が必要な子供の話
> ――ぼくは魔法が使える。/ そのことを教えてくれたのは、お母さんだ。お母さんは今は家にいなくて、葦原(あしはら)病院に入院している。たいした病気じゃないとはいえ、病気は……
不完全世界と魔法使いたちB
〜アキと幸福の魔法使い〜
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(379)11/6/19願いごとを叶えられなかった少女の話
> 幸せな夢を、見ていたような気がした。/ 誰かの手がそっと心を温めてくれるような、そんな夢だった。何もかもが奇跡みたいに優しくて、体がふわりと軽くなってしまって、空さえ簡単に飛……
処刑(7)11/5/18ある死刑囚の話
> その囚人の死刑が決定したとき、慣例に則(のっと)って最後の希望が聴かれることとなった。/ ――美しい習慣、死に対して与えられる寛大なる慈悲。/ 望みを尋ねられ、死刑囚の男は……
キヨコさん家の本屋(92)11/5/11本屋の主人の話
>「暇ですね」/ と、高村康平(たかむらこうへい)はイスに座ったまま、ぽつりとつぶやいた。/ 本屋の中に人影はなくて、確認するまでもなく客はいない。正確には、康平自身は客の範疇に……
革命収容所(80)11/4/22革命とひきこもりの話
> ――クーデターが起きた。/ 俺はその様子を、六畳一間、風呂・トイレなしのアパートで、昼飯のカップヌードルをすすりながら、古ぼけたテレビで眺めていた。/ 画面の向こう側では……
烏呪(66)11/4/9幸運の呪いの話
> ぼくが公園のブランコに座ってぼんやりしていると、向こうで夜花がカラスの死体を見つけた。/  季節はちょうど春と夏の中間という感じで、空気は陽気でぽかぽかとしている。放課後の……
眠くなる絵(22)11/3/10怒りっぽい絵描きの話
> その画伯の絵を見た人間は、誰でも眠くなった。/展覧会が開かれると、人々はその絵の前で、あたかも羊の群れに会ったかのごとく眠りこけた。当然、これでは絵を見る人間などいない……
魔王のいる世界(144)11/2/16魔王のいない世界の話
> ちょっと前のことなんだけど、もうずっと昔みたいに思えることがある。/ 休み時間になった途端、どこに隠れていたんだろうと思えるくらい騒々しくあふれかえる人の声、授業中にかつかつと黒板を……
ツチスガリ(54)11/1/23生きたまま食べられる人間の話
> ――新木樟平(あらきしょうへい)は気がつくと自分の体を食われていた。/「……?」/ はじめは、よくわからなかった。とりあえず、どこかの薄暗い部屋にいた。横になっているらしく……
私と彼女は本当に仲良しだ(22)11/1/12スラップスティックな話
> 私と杏(あんず)は本当に仲良しだ/あなたって本当にクズね、と杏は言う。時には口に出して言うだけじゃなくて鈍器を使って私の頭を小突いたりする。その結果私の頭蓋骨に罅が……
桜色の髪をした彼女(100)10/12/12桜色の髪の少女の話
> ういちゃんは桜色の髪をしていた。ういちゃんのことでわたしが一番はじめに思い出すのは、あの電車でのやりとりだ。/「――あいつらには想像力ってものがないのよ。中身のつまってないカボチャ……
どこにでも行けるドアがあるからといって、どこにでも行けるとはかぎらない(7)10/10/30どこでもドアの話
> 俺のアパートの扉はどこにでも行けるようになっていて、念じたり声で場所を指示したりすれば、そこに行くことができる。/ きっと時空の歪みとかひずみとかが、何らかの偶然で……
鏡の向こう側の彼女たち(90)10/8/25ある死体に関わる話
> 「――何故、人を殺してはいけないのですか?」/ ある哲学者は若者からそう訊かれて、激昂してこう答えたそうだ。「そのような質問をする人間と、私は口もききたくない」……
世界の終わりに見る夢は(66)09/5/20静かな世界の終わりの話
> 向坂茜は夢を見ていた。/ 夢の中には赤茶けた、何もない荒野が広がっている。降るような星の下で、鉄床みたいに平らな大地が地平線まで続いていた。そこには生命の気配はなく、その兆しも……
彼女の瞳に映るもの(92)09/2/18ちょっと不思議な少女の話
> 葵ちゃんはちょっと変わった女の子だ。/ いつもぼうっとしてるし、時々何もない宙空をじっと見つめていたりする。そして、/「――ハルちゃん、今あそこを何か通りすぎたよ」……
不完全世界と魔法使いたちA
〜ナツと運命の魔法使い〜
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(389)08/9/12半分になってしまった少年の話
> 学校の屋上からは、町の様子を遠くまで眺めることができた。/ 平凡で、古びているほかに、その景色にとりたてて変わったところはない。天橋市は県庁所在地とはいえ、よくある地方都市の……
魔女と青空(45)08/5/17奇妙な少女の話
> 「藤本くん、空はやっぱり青いんだね――」/それは、泣き出したくなるような青空だった。/僕は大きく息をすってその衝動をやり過ごし、しばらくの間そんな空を眺めていた。……
「昨日」はどこに行っちゃったの?(5)08/4/22ぼくが伝えることの話
> それは、夜がそっと世界を包んでいるときのことだった。/菫色の布団の下から、きみは言った。/「きのうはどこに行っちゃうの?」/ぼくらは寝室に並んで横になっていて……
狐ノ遺言状(5)08/4/18病に冒された狐の話
> ある日、キツネは遺言状を書きました。こんな遺言状です。/ワタシハ不治ノ病ニ冒サレマシタ。誰カワタシノ最期ヲ看取ッテクダサイ。ワタシノ最期ヲ看取ッテクレタ方ニハ……
不完全世界と魔法使いたち@
〜ハルと永遠の魔法使い〜
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(359)07/1/19大人にならなくてはならなかった少年の話
> 春の季節は苦手だった。/ 山際の傾斜は桜色に包まれ、冬の季節がやっと終わったような綻んだ風が吹いていた。遠くで鳥の声がする。/ そこは、小さな山を整地して造られた墓地だった……
王子と王女と人形使い(214)06/9/9影をなくした王子と王女の話
> これはある小さな、古い王国のお話です。/王国のそばにはそれよりなお古い、大きな森がありました。森には鬱蒼として樹が茂り、昼でも薄暗く、湿った空気が流れていました。……
百年の絵(7)06/3/23キエレの絵の話
> 王様にはキエレという一人娘がいました。/お妃はいません。彼女はキエレが生まれたばかりの頃に、亡くなってしまったのです。元々、体が丈夫でなかった彼女は、無理をおして……
星空(7)06/3/19とり残された星空の話
> 旅の道の傍らに、その壁画はありました。森の中に、建物はもう朽ちてしまって、壁の一部だけが残されています。馬車一台が通るのがやっとの小さな道を歩いていくと……
咲かない花(11)06/3/16病気の少女の話
> 男の子は足を骨折して、入院していました。小学校のグラウンドでサッカーをしていたとき、変なふうに足首をひねってしまったのです。男の子はすぐに病院にまで運ばれ……
終わりの日(6)06/3/15二人の奴隷の少年の話
> 丘陵は緑に覆われているとはいえ、春はまだ遅く、冷気を含んだ風が吹きすぎていきます。みはるかす山々には雪が積もり、冷たい雪融け水がそろそろ流れ出そうとしていました。……
星と月と太陽と(15)06/2/8たった一人の少年の話
> 冬の街は、徐々に暮れかけていました。/西から夕日の赤い光が差しこみ、道行く人の姿を一様に染めあげます。誰もが寒くないように厚着をし、白い息を吐きながら……
worlds in the snow (11)06/2/14ある日の雪の降る街の話
> ――目が覚めると、外には雪が降っていた。/わたしは冷たくひえたガラスの向こうにある、真っ白な綿ぼこりのようなそれをぼんやりと眺めていた。街はいつもより静かで……
月夜の森のトカゲ(95)05/9/27古い魔法の森の話
> 森は、静かな満月の光のもとにありました。/鬱蒼と茂る木々の下には、濃い闇がたまっています。昼さえ陽光の差さぬ地面は苔むし、空気は冷え冷えとしていました。辺りには……
壊れたピアノ(13)05/5/17ピアノの挫折と恢復の話
> ピアノはスポットライトの中にいました。/会場からは割れんばかりの拍手が響き、奏者が立ち上がって頭を下げ、それに答えます……
機関車(14)05/4/10夜と霧の中を走る機関車の話
> どこか遠くのほうから、ボォーという、巨大な動物のうなり声のようなものが聞こえてきました。かすかな地響きがゆっくりと近づいてきて……
牢獄の歌(8)05/3/31暗く冷たい牢獄に聞こえた歌の話
> 男は牢獄に投げ込まれ、その後ろで鉄の扉が閉められました。カシャンという音が、何かの運命を告げるように牢内に響きます。男を連れてきた憲兵が行ってしまうと……
人形(6)05/3/30心を持たない人形の話
> その人形には、心がありませんでした。/人形を作った老博士は、まず彼に言葉を教えました。人間の子供に教えるようにゆっくりと、丁寧にです。……
時計(22)04/12/14ある時計の話
> 時計は自分の中で、何かが動きはじめたのを感じました。それは私たちの心臓と同じように、コチ、コチ、と一定のリズムで動いています。いえ……
山になった小人(14)04/12/9そのままの話
> 昔、とても小さな小人がいました。小人は身の丈が三センチほどで、草むらがうっそうとした林、その辺の池は大きな湖、地面の起伏はなだらかな丘に見えました……
大きな木(3)04/10/30三百人の血と肉を必要とする木の話
> ある所に、とても大きな木がありました。幹は小さな村を一周するくらいあって、頂上なんて遥かかなたの空にだって届くほどです……
失敗例 ―巨人の場合―(8)04/10/25巨人の恩返しの話
> セザール国の森の中には、一人の巨人が住んでいました。森には古くて大きな木がたくさん生えていましたが、巨人が立って歩くと、その木の上から顔をのぞかすことが出来ました。……
鳥が歌をうたう理由 〜風〜(4)04/10/23風と鳥の関係の話
> 昔々、風はとても上手に歌を歌っていた。彼が歌をうたうと誰もが立ち止まってその歌を聴かずにはいられなかった。彼の歌は魔力でも持っていたみたいに……
鳥が歌をうたう理由 〜王〜(4)04/10/23鳥があまり歌わない理由の話
> ある王は、鳥があんまり美しく歌うものだから、それを捕まえておくことにした。王が命令すると鳥はすぐに捕まってしまった。何しろ王……
宝蔵(19)04/10/8ギリシャ・ローマ神話の話
> トロポニオスにとって、アガメデスは時にひどい苛立ちを覚えさせられる存在だった。彼が一体どんな感情を持ち、どんな価値観を抱きかかえているのか……
海辺の巨人(4)04/9/27横たわる巨人の話
> 海辺に、巨人が横たわっていました。/それは秋の頃だったのでしょうか。陽射しは不思議に透明で、吹く風はあくまで涼やかです。波の音は穏やかに繰り返し、海辺は眠るように……
王の戦士(15)04/9/17巨人に宝を奪われた戦士の話
> 王のもとには勇敢な戦士、プロプが仕えていました。プロプは王の戦士の中でもっとも強く、もっとも賢い人物でした。彼の髪は燃えるように赤……
真珠の涙(21)04/9/14貝は何故真珠を持っているかという話
> レリスフのアルリマは小さな漁村で、人々はみな魚を獲って日々の暮らしを立てていました。キューレという少年もそのうちの一人で、この……
ウェヌシスとコトニシス(3)04/9/13花と蝶の変身譚の話
> 昔、北の大地にとても貧しい土地がありました。陽の光は厚い雲を通して弱々しく、地の土は岩のように固く、育つもといえば稗や粟といった貧しいものばかりでした……
二人の王女(13)04/9/10町娘が王女と入れ替わる話
> ウェルトリングのお城には、一人のお姫様がいました。彼女は王と王妃の一人娘で、蝶よ花よとばかりに大切に育てられていました。何しろたった一人の子……
霧の王宮(7)04/9/9ウォルフラム宮殿の一夜の話
> ウォルフラムの宮殿では、今夜も夜会が開かれていました。醒めるような星々の群れの下で、宮殿はなおいっそうの光に包まれていました。窓という窓からは……
鈴の音の鳴るまに(39)04/9/2鈴の音を追って旅した盲目の少年の話
> テケトは目が見えませんでした。/子供の頃、病気で失明したのです。でもそれはテケトが物心つくかつかないかといった頃のことで、彼自身は自分の陥ったその環境について、ひどく混……
魔女の約束(54)04/8/19大切な人がいなくなってしまう話
> 目の前には、魔法陣の書き込まれた白い皿があった。/リリルは眼を閉じ、その白い皿に神経を集中しながら手に持った杖をかすかに傾け、呪文を唱えている……
星の海を越えて(3)04/7/12星に恋した王子の話
> 昔、一人の王子がいました。彼は夜毎に空を眺めては、漆黒の海に浮かぶ無数の輝きに見入っていましたが、いつしかその内の一つ、星々の……
忘れられた王子(16)04/7/4王様に閉じ込められたまま忘れられた王子の話
> 昔々、ある所に十一人も子供を持った王様がいました。十一人は上からフェール、セーレ、マリト……、でもこの話に出てくるのは十一番目、末っ子のリリールですから、他の兄弟の名前は……
おとぎの街(19)04/6/29不思議な街のお祭りの話
> 月がそいでみがいたような明るさで空にかかっていました。まるで銀できれいにこしらえた飾り物のような美しさです。地上は白く明るく……
塔の上の悪魔(19)04/6/12ある罪を犯した王様の話
> ツェフトレントの国の中央には、この国で一番大きなお城である王様のお城があって、その中心には高い塔が一つだけ伸びています。/その塔は何百年も前からあって、頂上には……
美の果実(9)04/6/10美の果実を食べた神の話
> 世界が出来上がって、まだ間もない頃のことです。/天上の園には大勢の神々が住んでいましたが、その中にマーウェルエートという一人の神がいました。……
樹釣り(5)04/6/8古い木の上で釣りをする五人の話
> レーネフェルトが旅をしていると、一本の老木の上で釣りをしている、五人の人間がいました。老木は湖の真ん中の小島に立っていて、……
ドルチェの白い骨(98)04/4/7クジラの話
> 深い深い海の底、光の一筋さえ射さない暗闇の底に、ひっそりと横たわるものがありました。/それは、ちょっと見……
かざなり(4)04/3/30峠に吹く強い風の話
> ミシュエトの山にある峠には、いつも強い風が吹いています。その音は地の底のえたいの知れぬ悪魔が歌をうたっているようでもあり……
氷の女王(20)04/3/27春が来なくなった国の話
> 昔、北方のある国で春先だというのに空一杯の雹が降ったことがありました。人々はそれを、気まぐれな季節の乙女のいたずらだと……
悪魔の願い(11)04/3/12らしくない悪魔の話
> むかし、あるところに一匹の悪魔が住んでいました。/悪魔というのは人間を誘惑して堕落させたり、何の罪もない人を貶めたりするのが……
蝶の舞う谷(16)04/3/1学校の裏山にあるという蝶の谷の話
> ヒナがその話を聞いたのは、小学四年の夏休みにクラスの全員が学校に泊まった時のことだった。/「学校の近くの山に深……
魔法のくるみ(5)04/2/23割ると願いの叶うくるみの話
> むかし昔、ある兵隊さんがいて、その兵隊さんは戦争でたくさんの敵を倒して手柄を立てたものですから、褒美として王様から魔法のくるみをいただきました……
三つの道具(8)04/2/19できるだけ本格的な童話にしようとした話
> むかし昔、ある国のお姫様が明日をも知れぬ病気にかかりました。王様は八方手を尽くして医者を探しましたが、どの医者も病気を治すことはできません……
少年と影(13)04/2/16友達の話
> リストは村ののけ者でした。/なにしろ父親が村の大事なたくわえを盗んで逃げてしまったのです。他に身よりもなく子供だったリストは、自分自身の罪ではないとはいえ……
自動列車(28)04/1/28形而上小説的(?)な話
> 聖夜祭だった。新年を祝うそのお祭りの日、奇妙に寄せ集められたその五人と一つは、行き先の分からない列車の中にいた。/世界の端っこに、二度と起こらない……
雪女(8)04/1/26雪女の子供の話
> 谷深い山村の奥山に、一匹の雪女が住んでいました。/雪女は冬には山に雪を降らせ、時に迷い込んできた旅人を氷らせてしまう、恐ろしい妖かしです。……
(12)04/1/23救われることを願った女の子の話
> 時々、とても小さな箱に入ってしまいたいと思う。膝を抱えると、ちょうど収まってしまうような小さな箱。そのふたを閉じると、真っ暗で何の音も聞こえなくなる。そういう……
夢見る猿(2)03/12/28月を目指した猿の話
> 一匹の猿がいて、夜空をずっと見上げていました。/「月には兎がいるそうな」/というので、猿は是非とも本当……
彼はいかにして生まれ、そして死んだか(12)03/11/27ある石の話
> その頃、私は人間のいう「意識」というものを持っていませんでした。私はあまたある同じ形をしたもの達の一つに過ぎず、陽の光の暖かさにも、小鳥の声の美しさにも……
憐れな子(4)03/11/7詩人の語る話
> その詩人は語りました。/「憐れな子、黒い天使に祝福された呪われた子。お前はこの世に生まれた人間が受けるべき神の祝福もなければ、愛すべき人の……
魔女の帽子(9)03/11/4物々交換の話
> チナツは小学六年生の、ごく普通の女の子です。背の高さもクラスの真ん中くらいで、算数が苦手な他は成績も普通、運動だってそこそこできます……
風の王国(18)03/10/30羽を持つ人々の王国の話
> 西のはての海を越えた向こうに、背中に羽の生えた人たちがいました。/羽が生えているといっても、外見は普通の人……
どこまで行くんですか(7)03/10/11突然砂漠にいた話
> 「どこまで行くんですか?」/と、アリスは訊きました。なんといっても、もう砂漠を二百キロも歩いているのです。砂漠の大部分は固い礫だと言われていますが、アリス……
迷い星(33)03/9/18一人の少女の話
> シルテ村、というのはエルデナでも西のほうに位置している。トリニアとの国境に近い、ごく平凡でのどかな村だ。/春だった。……
タヌキの恩返し(5)03/9/15昔話
> むかし、加賀の国の稲代という在所に藤太といういたずら好きのタヌキがすんでいました。/藤太はお化けにばけて子供たちを驚かしたり、お地蔵様に化けてお供えものを盗んだりしています。……
ニワトリ(1)03/9/13大きなニワトリの話
> 昔、ある国に家ほどもある、大きなニワトリがいました。/大きなニワトリは、大きな小屋に住み……
百年の眠り(19)03/9/9悲しい話
> その国の王と王妃の間には長いあいだ子供が生まれませんでした。王と王妃を慕う国民の間でも、それは長い気がかりです。/ある日、国王は臣下の一人に相……
天まで近きところ(42)03/8/27三つの問いかけの話
> 昔、ある所に小さな村があった。雪が降れば村全体が震えているようにさえ見える小さな村だ。/その村の一軒に母……
虹色の魚(12)03/8/11「夕鶴」の話
> 村人の話――。/「ああ、ハルのことが聞きたいって? 親戚か何かかい? ……そんなところ? まあいいや、話せっていうんなら話してやるよ……
失敗例 ―竜の場合―(5)03/8/6眠る竜の話
> トルプコ国には一匹の竜が住んでいました。名前をムネリといい、国で最も高い山の頂上にある洞窟にいました。/ある日、ムネリは洞……
空を飛んだ魚の話(8)03/7/29飛べない魚の話
> とある国のとある湖に、大きな魚が住んでいました。イサナという名前で、大きいといってもお城ほど大きくはなく、小さな部……
どこでもない場所の、誰でもない自分(15)03/7/21つまらない話
> 気がついた時、彼は自分の全然知らないところに立っていた。/それまでどこにいたのかも分からなければ、何をしていたのかも分からない。気づいたらそこにいて、立ちつくしていたのだ。……
孤独な王様(4)03/7/16憐れな男の話
> 「今日は何のお話?」/と、ミスキィは訊いた。/「昔、誰よりも特別であろうとして、そして誰よりも孤独な人がいたの」/「一人ぼっちだったの?」……
神様からの贈り物(13)03/7/10中学生の少年と少女の話
> こんな題名で書けといわれても、僕には簡単に書くことなんて出来ません。/ただ言えるのは、神さまは贈り物なんてしない、ということです……
扉の妖精(2)03/7/3野原の扉の話
> 昔、王国の錆びた平原≠フ真ん中に木でできた扉がありました。二メートルくらいの高さのある、ごく普通の扉です。こった装飾もなければ、頑丈なマホガニーで……
魔法の苗床(11)03/6/28岩の世界に緑をもたらす話
> 昔、世界は一面の岩だらけでした。人々は岩の城や岩の家に住み、岩の家具や岩の玩具を作って暮らしていました。/でも岩ばかりに囲まれているせいか……
無明の剣(74)02/6/14ティル(愚者の夢)の話
> 「剣術などはやらぬほうが良い」/と、言われた。/体が弱い。何かの拍子に咳き込むと、それが一二分も止まず、最後に少……
暦の世界(31)02/6/3子供たちが暦の塔に向かう話
> 氷の日≠ェはじまった。/つまり、水の日≠ェ終わったのだ。暦は火からはじまって、風、水、氷、そして火へと戻って一巡する。一つの日は九十回の日の出と日没……
月の話(3)02/1/月と海の話
> 昔のことです。月がまだ地上にあって、大地には岩ばかりで水がなく、したがって生き物などはいなかった頃のことです。/月は地上で最も大きな岩で、いつもそのことを……
愚者の夢
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(350)99/ 長い話
> トリア暦二五六年といえば、クレネスがまだ一地方の国に過ぎず、十二王国が割拠していた時代である。/セルフィドのトレスで、一人の男の子が生まれた。……
The dragon’s fountain(9)98/英語の話
> The place was shining by the sun of spring./There were two tombstones and one boy. The boy looked like about twelve years old, and he had black hair and deep dark eyes. But ……

・これらは、一度ノートに手書きしたのを打ちなおしたものです。
・作中の傍点、太字などは省略されています。
・お話は日付順に下のものほど古くなって、一番上には新しくupしたものがあります。
・適当に見てもらえれば嬉しいです。
・圧縮版は「Microsoft word」で作成したものです。