昔、王国の錆びた平原≠フ真ん中に木でできた扉がありました。二メートルくらいの高さのある、ごく普通の扉です。こった装飾もなければ、頑丈なマホガニーで作ってあるわけでもありません。それはごく普通の家にあるような、ごく普通の扉です。 誰もがそんなところに扉があることを不思議に思いました。 ある者は言います。「あれは昔家があって、扉だけが残ったんだ」 またある者は言います。「扉だけが残っているなんておかしい。あれは誰かが作ったオブジェだ」 でも本当のことは誰も知りません。 何年も何十年もたつうち、扉は腐り、蝶番は緩み始めました。野ざらしになっていたせいで木や鉄は腐っていったのです。 でも誰もそんなことは気にしません。それは誰も使うことのない、誰も必要としない扉だったからです。 それでも扉は雨の日も、雪の日も扉であり続けました。 ある時、町に住む一人の男がその扉のことを聞きつけました。そして平原にずっとあり続ける扉が哀れに思えて、そこに家を立てることにしました。扉は玄関の扉となり、補強され、ようやく扉としての役割を果たせるようになりました。 家が完成して男が扉を開いてみると、そこには美しい一人の娘がたっていました。 「私はこの扉に閉じ込められていたある妖精の娘です。あなたのおかげでようやく外に出ることができました」 そして男はその家で美しい娘と幸せに暮らしました。
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