「Sa・Ga」 について


 最近久しぶりにやってしまった。
 魔界塔士Sa・Ga。1989年にSQUAREから出されたゲームボーイのソフトである。
 Sa・GaシリーズはGB、SF、PS、PS2と今でもシリーズが続いている(と思うけど、まあ様変わりはしてる)。WSでも出てたりするが、今回は第一作目の話。
 というか、実のところSa・Gaの前に「魔界塔士」がつくことさえ覚えていなかった。その他にも、今になってやってみると小学生の頃にやった頃には全然気にしなかったことがおもしろくて、意外だった。
 まず、オープニングで(文字しかないけど)簡単な説明がつく。
 世界の真ん中に塔が立っていて、それは楽園に通じているという。その楽園を目指して多くの者が塔に挑んだが、帰ってきたものはいない。
 「楽園に通じる塔」と簡潔に言い切ってしまっているところが、すんなり了解できてゲームに入ることができる。子供の頃は(というセリフは使うのにけっこう抵抗があったりする)そんなことはまるで気づきもしなかったし、気にもしなかった。
 女主人公を選んで、サーベル売って、「ちからのもと」買って99にすることは良く覚えていたけれど。
 ゲームは塔を目指すパーティーを組んで、進んでいく(よく分からないけれど、GB版では一人では行けなかった)。玄武、青竜、白虎、朱雀、子供の時にSa・Gaでこの四つを覚える人は多かったのではないかと思う。
 ゲームは概ねその四獣の面と、塔をのぼっていくことに始終するが、塔の途中でちょびちょび話があったりする。
 核シェルターに逃げ延びたが、食料が尽きて結局全滅した一家とか(たぶんここで「かくばくだん」が手に入る)、主人公の他に塔をのぼった人間の、最終的な到達点を記録したライブラリとか(ここで「フレアのしょ」が手に入る)、神様からエクスカリバーを預かってた人とか。
 他にもいろいろある。
 白虎の面で双子の姉妹がいるが、かたっぽはみんなを裏切って白虎についている。そのときのセリフが、
 「私は強いものが好き」(原文はひらがななので、漢字などは引用者による。以下同じ)
 とかだったりする(これは今になってみると、なんだかすごいセリフのような気がする。子供向けのゲームだろうに、と思わずにいられない)。ほかにも武器が「ひなわじゅう」だったり、「ガラスのつるぎ」があったり。
 けど今回やりなおして一番ひかれたのは、ラストだった。
 かみさまチェーンソーで一撃。
 ではない。
 このラストで、今までのことはすべて、平和に飽き飽きしたかみさまが仕組んだゲームだった、ということになる。そしてかみさまのセリフ。
 「多くの者たちがヒーローになれずに消えていきました。死すべき運命を背負ったちっぽけな存在が、必死に生き抜いていく姿は私さえも感動させるものがありました。私はこの感動を与えてくれた君たちにお礼がしたい!」
 なんというかこれは、ゲームの中で精巧にゲームの枠外しをやってるような気がする。
 それまでのことが実はゲームだった、とゲームの主催者であるかみさま(=現実におけるゲームの製作者。要するにSQUARE)に告げられながら、その主催者を現実的には同じゲームの中で倒してしまう。
 現実としてゲームであるSa・Gaと、Sa・Gaの中で展開されるゲームが同じ構造をとりながら、Sa・Gaの中で展開されるゲームにおいてはそれをプレイヤー自身が破壊することになる。それはとりもなおさず現実としてのゲームの主体者が、製作者ではなく、プレイヤー自身であると、主張することを意味する。
 僕はこの構造を非常にうまい、と思った(というほど、大げさなものではないが)。ゲームという虚構を、虚構であると告白した上で、プレイヤーはそれを破壊する。さらに主人公は神様を倒したあと、扉の向こうにある別の世界を前にして言う。
 「行こう!」「どこへだ? ――俺たちの世界へ!!」
 二重構造としてあるゲームの中で、主人公は虚構の破壊と、その再生を行う。その過程は現実のプレイヤーには物語の完全な完結、製作者を離れてゲームが自分のものとなったことを意味する。
 要するに、かなり意味深な終わり方をしている、ということだ。
 僕は小説だろうがマンガだろうがアニメだろうが、わりと「製作者」を意識するところがある。それは別段自分がなにか作ろうとしているからとかではなく(たぶん、それもあるけれど)、ただ「気になる」のだ。
 僕は製作者(物語の裏の裏みたいなところ)を想像することが作品を深く理解することだ、とは少しも思わないし、それは各人が勝手にやればいいことだとは思う。下手に作者のことを考えるとうまく物語に入れないんじゃないか、とも思う。
 それでも僕は「作者」のことを想像するし、それは半ば無意識的なものとしてある。
 魔界塔士Sa・Gaは、GB初期のものにしてはそういう点で、非常に驚かされた。

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